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大西メディカルクリニック健診室が2021年6月から始めている「LGBTQフレンドリーな健診クリニックへの取り組み」についてご紹介します。
※LGBTQとは、セクシュアルマイノリティ(性的少数者)を表す言葉。
性的指向や性自認のあり方を表す言葉の頭文字をとった言葉。Lesbian(レズビアン):同性を恋愛の対象とする女性、Gay(ゲイ):同性を恋愛の対象とする男性、Bisexua(l バイセクシュアル):同性も異性も恋愛対象となりうる人、Transgende(r トランスジェンダー):出生時に割り当てられた性別と異なる性を自認する人、Questioning(クエスチョニング):性的指向や性自認が定まっていない/定めていない人、Queer(クイア):元々は「風変わりな・奇妙な」といった英語圏の言葉。セクシュアルマイノリティ当事者が、自身のセクシュアリティにプライドを持って表現する言葉として使い始めた。現在は、多様なセクシュアリティを包括する概念として称される。
2年前に、「実は世の中には健康診断を受けたくても受けられない人がいる」とお聞きしたことが今回の取り組みのきっかけでした。LGBTQ、特にその中でもトランスジェンダーの方の中には、健康診断で心が女性にもかかわらず、性別が男性であるために男性として対応されることに違和感があり健康診断を受けたくないという話でした。
そして、そこからLGBTQについて学ぶと、その当事者は人口の約10%前後であり、実は当事者だけれど、受け入れてもらえる環境にないから、隠している方が多数だということを知りました。
日の出医療福祉グループで考えると、約300人超のLGBTQの当事者の方がいるとも考えられます。しかし、現在の当グループの状況はとてもLGBTQフレンドリーな状況であるとは言えません。
そこで、目に見えて問題が起こっている健診部門から、その取り組みを始めることにしました。
今後、これをきっかけに少しずつLGBTQフレンドリーな日の出医療福祉グループを目指したいと思います。
奉志会 副理事長 松尾 太郎
大西メディカルクリニック健診室は、昨年6月の研修・現場視察からスタートして毎月ミーティングを重ね、「セクシュアルマイノリティ(性的少数者)の方々も安心して受診していただける健康診断」を目指して取り組んできました。今年の1月14日には、実際にトランスジェンダーの方に現場を視察していただき、ハード面(トイレや更衣室、検査場など)やソフト面(受付や検査時の対応)に対するご意見・ご感想をお聞きしました。
●トイレ
サインボードの「男女別表示」の代わりに、性別を指定しない「誰でもOK表示」が掲示されていること、通路から直接個室に入ることができると目線を気になりにくいこと。
●検査着
「男女別」「サイズ別」の色分けがないこと。
トランスジェンダーの方にとっては、性別などによる分類がないことで全く受診のしやすさが違う。
●更衣室
病院側から受診者に対して性別を指定せず本人にまかせていること。
●検査時
心電図などの検査で、服をどこまでたくし上げるのか本人にまかせていること。
現在は女性のみ肌を露出させないようにタオルで覆っているが、戸籍上の性別に関わらずどんなときでも覆うことが望まれる。
●全体
カーテンの仕切りや、個別の更衣場所など、プライバシーへの配慮があること。
●受付
現在は受診者を名前で呼んでおり、トランスジェンダーの方にとっては、戸籍上の名前で呼ばれたとき、周囲の好奇の目にさらされるおそれがあり抵抗感がある。カードを見せて確認するなど、声を出して名前を呼ばない方法に統一していく(※今後、番号で呼ぶシステムを導入するため、この問題は解決する予定です)。
●健康診断質問票
性別欄を「性別」から「戸籍上の性別」と変更したことで記載がしやすいと思われる。あらかじめ病院側に連絡しておけば、「氏名」欄に保険証の名前と違う「通称名」を記入できる、というしくみを検討してほしい。
検査時の肌の露出への配慮や、カーテンの仕切り・個別の更衣室によるプライバシーへの配慮など、セクシュアルマイノリティという限られた方々のためだけではなく、一般の受診者にとっても喜んでもらえることだと思います。
そう考えると、このセクシュアルマイノリティの方々への取り組みは、実はすべての受診者の方への対応を改善するためにも役に立ちます。これを機会に、今までのやり方を見直して変えていき、“すべてのお客様のよろこび“につながるようにしていきたいと思います。
まだまだやらないといけないことはたくさんあります。
「本当に誰もが安心して受診できるようになっているのか」
そのことはずっと考え続けていかないといけないと感じています。
今回の大西メディカルクリニック検診室の取り組みは、『まるっとインクルーシブ病院の実装プロジェクト』代表・きむほんぢゃさんにご協力いただきました。
『まるっとインクルーシブ病院の実装プロジェクト』ではセクシュアルマイノリティの方や医療関係者、専門職などさまざまな職種から約20名の参加者を招き、月1回(多い月は3回)、オンラインミーティングを行われています。発足当初から、「学ぶ」に終わらず「実際にセクシュアルマイノリティの方が安心な場をつくる」ことを目指して活動されています。