稲美苑の業務改善の取り組みについて取材しました - 日の出医療福祉グループ
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稲美苑の業務改善の取り組みについて取材しました

日の出医療福祉グループでは来る「働き手不足」に備え、労働環境改善・業務効率化を目指した「ICT・AI・介護ロボット導入」を推進し、国や県が推奨している介護の現場への先進技術の導入について意欲的に研究しています。
前回のサンライズに続き、今回は同じく加古郡稲美町内にある「介護老人福祉施設 稲美苑」を取材しました。

介護老人保健施設サンライズの記事はこちら

介護老人福祉施設 稲美苑

(施設紹介)
稲美苑は1992年5月に開設し、今年で32年を迎えました。琴池のほとりに位置し、苑庭には毎年桜が咲く自然環境にもめぐまれた立地です。特別養護老人ホーム・デイサービス・ショートステイ・訪問介護・介護相談センター・グループホーム・在宅介護支援センタ―を同敷地内に併設しています。

お話を伺った相手
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稲美苑 施設介護支援専門員 稲谷さん
2006年新卒で入職後、稲美苑に配属(以降育児休業等はさみながらも同施設で勤続18年)。学生時代から介護事業所でのアルバイトを経験し、就職前に介護福祉士免許を取得。

業務改善の取り組みを始めたのはいつですか?

大きく動き出したのは2023年からですね。介護ロボット助成金で機器をいろいろと入れて、施設全体で取り組もうという空気になりました。
私が日の出医療福祉グループ内の「ノーリフティング※チーム」の統括マネージャを担当しているので、稲美苑でも、現場の人を巻きこみつつスタッフ教育を進めているところです。

※ノーリフティングケアとは
持ち上げずに行う介護ケアのこと。被介護者と介護者の双方に負担のない介護を提供することを目指した介護手法。介護者の身体にも負担の少ない統一された介助方法を習得すること、介護環境を整備すること、介護ロボットを正しく活用することが挙げられる。

どこから取り組みを着手しましたか?

介護者の負担が大きいところでは、やはり介護事故が起きがちになります。利用者様が安全に過ごせて、職員が働きやすい環境を目指すために、まずは夜間の見守りのシステム化と、移乗に介護ロボットを用いるところから始めました。

ネット環境とそれを活用した機器


システムの導入等にあたり、2023年の介護ロボット補助金を活用してまずは施設内に全館Wi-Fiを用意しました。アクセスポイント(Wi-Fiの中継器)を廊下~各お部屋と、色々なところに設置しています。これのおかげで館内全体でWi-Fiを使うことができています。Wi-Fiはインカム・モバイル端末・見守りシステムの通信に役立っています。


インカム
職員はインカム本体を腰のポーチに入れて持ち歩いており、チャンネルが4つあるのですが、2階のナースコールなどは2のチャンネルに入ってきます。1・2・3とチャンネルを切り替えることで、それぞれの階の通信を聞くことができます。1階の事務員さんに用事があったら1を押して話したりもします。
イヤホンは骨伝導で耳に圧迫感がなく、聞こえもいいです。
インカムの導入前はPHSを持っていたんですが、壊したり、両手を使ってケアしているときには鳴っててもとれないことも多かったです。インカムの場合は耳に直接「〇〇号室」などの情報が入ってくるので、便利です。

見守りシステムについて

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ネオスケアと眠りスキャン、センサーベッドを導入しています。


ネオスケアはカメラとセンサーをベッドに取り付けて、起き上がりや、転倒などの動きがあればその情報がセンサーから送付されます。現在は20台だけなので、転倒のリスクが高い方に対して設置しています。


センサーベッドも、ベッド上での動き出し・起き上がり・座っている位置など、ベッドでの状態や離床かどうかなどを検知してくれます。


眠りスキャンは睡眠や呼吸の状態、心拍数などを検知するので体調が悪い方や、離床せずお部屋にいることが多い方の状態把握に用いています。将来的には個々の利用者様のデータを蓄積して活動時間を把握し、トイレ誘導などのケアを提供する時間の検討付けを行ったり、睡眠状態の改善を行うことに役立てたいと思います。


各センサーの情報は、職員が持ち歩くモバイル端末に届きます。ネオスケアのカメラ映像も見ることができるので、体勢を見て急ぎの対応がいるのか、ただの寝返りかなどをすぐ確認できます。

移乗について

移乗が自分でできない利用者様は今まで職員が2人体制で抱え上げて車いす等へ移乗していたのですが、機器を使うことで、利用者様も抱えられる怖さを感じなくて済むし、職員の負担の軽減にもつながっています。去年から抱え上げるということをかなりなくしたので、職員からも「腰が楽」という声をもらっています。


床走行リフト(左)
専用のつり上げシートと一緒に用いて、ベッドと車いす間の移乗や、お風呂・トイレへの移動などに用います。
今は各階にありますが、あと2台増やして、特養の各ユニットに一台ずつ置きたいなと思っています。大部分の職員が利用法を習得しているので、しっかりと実用しています。

スタンディングリフト(右)
利用者様に身体を機器に預けて前傾姿勢になっていただき、立ち上がりや方向転換を補助するリフトです。立ち上がりに関して不安がある方に使用するのですが、引き起こしや抱き起こしによる事故を予防できます。


スライディングボード
リクライニングで完全にフラットにできる車いすと、ベッド間での移乗に用いています。利用者さんの体をボードの上に載せてスライドさせることで、ほぼ力を使わずにさっと移乗ができます。


フレックスボード
蛇腹に折れるスライディングボードです。自由自在に折れ曲がるので、リクライニングがそこまでできない車いすの場合でも移乗に使えます。寝たまま入れる特浴機から移すにあたっては、こういったものを使用しています。
コンパクトなのでしまってもおきやすいです。

導入機器についてご案内いただきありがとうございました。
取り組みについて、職員の皆さんの反応はどうですか?
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結構前のめりでついてきてくれています。

稲美苑はいま介護度が上がってきていて、去年頭くらいまでは平均介護度が要介護3くらいでしたが、今年は平均介護度が4を超えていて、介護度が高い方が多いという状況です。介護度が上がるともちろんケアにかかる負担も増えますので、ロボット導入を進めています

利用者様やご家族の反応はどうですか?

2023年に、実は稲美苑では介護事故が多く起きまして、原因がわからない内出血や骨折があったりしました。今はリフトを使ったり、ボードを使うようになったことで原因がわからない利用者様のけがというのはなくなりました。そういう状況を見ると、やっぱり職員が人力でやることによる負荷が利用者さんの体にかかっていたのではと思います

人力で抱えるとどうしても無理に力が加わったり、移乗するときに利用者さんの足元が見えにくくなってベッドとかにぶつけてしまったりということが起きていたので、そういう突発的な事故が減ったというのは機器を導入して一番良かったことですね。
けがの原因がわからないと、ご家族への説明も「どうして起きたかの検証をさせていただきます」という報告からになってしまい、その検証にも時間をいただくことが多かったので、よかったと思います。

今後の展望を教えてください。

負担の大きい介助として挙げられるのが「入浴介助」です。
これを業務改善するために、泡シャワーやリフト浴を導入したいと考えています。

泡シャワーはテストをすでに済ませたのですが、現場からの反応がすごい良かったですね。石鹸と水でできた泡がシャワーから直接出てくるので、利用者さんはあったかくてフワフワの泡を浴びて気持ちいいし、きめ細かな泡が体の汚れを落とすので身体をこすらずに済み、介護者の負担が軽減されます。
配管の問題もあって、特浴だけになるかもしれませんが、導入予定です。

リフト浴はシャワーキャリーに座ったまま浴槽に入ることができます。立ち上がりが難しい方は浴槽へ抱え上げているので、これを導入したいと思っています。ただ、稲美苑の浴室の構造がこのお風呂に適応していないので、浴槽を入れ替えたりの工事が必要です。

取り組んでみて、総括していかがですか?

利用者様・職員双方の負担軽減には間違いなくつなげられているのですが、取り組んでいるうちに課題が出てきて、解決して、その繰り返しっていうところですね。稲美苑の今の状態がいいとは思っていないので、よりよい状態を目指して他の方々と一緒に進めていきたいと思います

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